近代に生まれた産業がおしなべて衰退し、本というメディアも含めこの流れは押しとどめようもない。
      それでも私たちは本に愛されたい、本とともに生き延びたいと思うのです。
      近代以前の中世ヨーロッパでグーテンベルクによる四十二行聖書があり、
      また日本でも木活字による私家版や銅活字のキリシタン版がありました。
      そのどれもが美しく、魅力的でデザインも素晴らしい。
      現代、新興産業のITやAIがフロンティアとして浮上し、隙間に電子書籍が登場するも、
      殊更期待されることもなく既に飽きてはいますが、
      それでも私たちは文字による意思伝達を放棄することは出来ないでいます。
      最先端とはつまりは懐かしさです。
      今問われているのは、文字をいかに美しく組むか。
      ただそれだけのことで、文字による伝播をスマートに行えるタイトルの文字組、
      本文組版が必要なのは疑いようもないことだと思っています。 
      
      むねとし・じゅんいち
      グラフィック・デザイナー
      
      鈴木一誌デザイン事務所を経て、1999年宗利淳一デザイン設立。
      書籍・雑誌のデザインを中心に多くのページに関わる。
      
      第36回造本装幀コンクール 日本印刷産業連合会会長賞/第42回造本装幀コンクール 日本図書館協会賞 


